新任式・始業式

  年度が明けて最初の行事です.新任の先生方から様々なお話があります.水高OBの方が着任されることも多く,熱く語る先生も結構います.この後,エールを送るわけなのですが,エールネームをどうするか考えるのが意外と大変です.前日などに相談するのですが,名前は失礼だとか同じ名字が2人いるとか,リーダーの中でも熱く(?)議論するわけです.適当にエールをしているものだと思っている人もいるかもしれませんが,実は打ち合わせをしてからやっています.
  始業式では,校長先生から年度の指針などについて講話があり,校歌を歌って散会となります.私が3年生になったときは,校長先生も交代された年だったので,どんな講話をするのか興味津々だった記憶があります.
  散会後,応援歌練習に向けて練習をしようとしたところに新任の書道の先生が車で通りかかり,窓を開けて「エール素晴らしかった.感動した」と言われたとき,日頃の努力が報われたように感じました.


入学式


 入学式自体は粛々と進められていきます.終了後に教室に戻ると,先生から「応援団リーダーが説明に来るから」(何も言わないで出ていく先生もいる)などと言われ教室に残されます.そして,ここからが本番(?)です.突如応援団リーダーが激しく戸を開け,各教室に乱入してきます.ほとんどの1年生はあっけにとられ,声も出ません.そして,リーダーから応援歌練習の概要が話されます.私の場合は,返事(男子はオス・女子はハイ),男子の学帽・女子のハンカチ(応援歌の手振りで使う)などを話しました.人それぞれ話すことが違うのですが,私自身は緊張していた(?)ので事務的な話をして直ぐ教室を出たような気がします.
  この儀式が終わった後に,2・3年生が1年生に応援歌を優しく教えてくれます(任意参加).応援団リーダーは赤レンガで1年生の帰りを待ち受けます.新入生は各リーダーの前で挨拶をして赤レンガを抜けていくわけですが,声が小さい場合には容赦なくやり直しです.私達から指導を受けた1年生はリーダーが6人だったのでまだ良かったと思いますが,私が入学した年はリーダーが9人だったので大変だった記憶があります.声が小さいため通過するのに時間がかかり過ぎ,保護者から先生にクレームがついたこともありました.まさしく過保護といった感じでしょうか・・・.逆に,懐かしそうに見ていた水高OBらしき保護者の方もいらっしゃいましたが.


対面式

  応援歌練習が始まる前に2・3年生との対面式が行われます.体育館の入口付近に暗幕で暗室を作り,1年生を一人ひとり送り込んでいきます.暗室の中には団長と太鼓の人間が入っていて,1年生が団長に挨拶をします.団長がOKを出せば直ぐに通過できますが,なかなか通過できず泣き出しそうな女子生徒もいた記憶があります.暗室を通過すると,そこは別世界になっています.部毎に先輩が花道を作っていて,激しい勧誘が行われます.一部の新入生は胴上げまでされてしまいます.
  新入生が花道を通過した後,新入生と2・3年生が相対する形で整列します.そこで,2・3年生が第1〜4応援歌・校歌を披露し,1年生にエールを送ります.普段はあまり本気を出さない2・3年生も,新入生の前では蛮声で1年生を圧倒します.その後(先だったような気も?),生徒会や各部がステージ上で紹介を行います.この紹介もほとんどの部が笑いを取りにいくので,予餞会並みにおもしろいです.


応援歌練習


  肝心の応援歌練習です.私が新入生の年までは月曜〜金曜の5日間だったのですが,週休2日制の影響(?)のために土日をはさんで水・木・金・月・火の5日間となってしまいました.新入生にとっては良かったのかもしれませんが・・・時間は,早朝が7:30〜8:20,放課後が16:00〜18:00です.3年生は早朝練習免除で,放課後についても2・3年生は部活のために全体練習(3日間くらい?)のみの参加となります(2・3年生は中座し部活へ).場所については,個別練習(朝・放課後)が各教室,全体練習(放課後)が第1体育館または中庭となります.
  応援歌練習開始の時間は太鼓の『ロール』というもので知らせます.時代劇で偉い人が登場するときのアレをさらに長くしたものです.応援歌練習でのロールは非常に長いもので,開始の15分(10分?)前から叩き始めます.ロールの間隔が短くなり,連打の後に太鼓のバチが床に落ちた音と同時に1組から順次担当リーダー(基本的に1人が1クラスを担当)が戸を激しく開けていきます.そこから応援歌練習が始まります.放課後に全体練習をするときは,この後に練習場所へ移動しますが,基本的に各教室での練習になります.
  朝練は様々な意味において特徴的で,まず常識として遅刻をしないことと挨拶の励行を徹底します.応援歌を練習する以前に,まずは礼儀についてしっかりしてもらいます.遅刻者は正座と説教です.2年生も朝練をするわけですが,こちらは『有志』と呼ばれる3年生の代表が指導にあたります(リーダーも当然行きます).有志は人物が優れていると思われる3年生の男子にお願いしてやってもらうことになります.

  最初にお断りしておきますが,ここからは私的考察です.毎年のように何故厳しい応援歌練習を行わなければならないのかということが話題に登ります.このテーゼに対して様々な考え方がありますが,週休2日制が敷かれ,他の行事が廃止されようとも,数十年にわたって応援歌練習が廃止されずに存続していることから,なんらかの普遍的存在意義があることは明らかだと考えられます.自分が人生を語るのは傲慢かもしれませんが,人生の多感な時期に自分の意見・意志とは相反する,何らかの事を無条件で成し遂げるという経験が必要だと思います.この経験はモラトリアム的職業である高校生という身分から離れたときに必ず役立つはずです.「そんなのは理不尽じゃないか」という方もいらっしゃいますが,この程度の理不尽さに耐えられない人間が社会において責任ある人間にはなれないと思います.
  また,県内のほとんどの伝統校で同様の応援歌練習が古くから行われているということを鑑みると,指導的立場に立つであろう人間を教育する学校において,精神的貴族主義(イギリスにおいて戦争に真っ先に志願したのは貴族階級であった)に基づく社会的責任を身につけさせるため,敢えて厳しい応援歌練習を課していたのだと考えられます.これは現在でも必要な素養だと思います.
  しかし,ほとんど応援歌を歌わないような現状では,応援歌練習のための応援歌になっているような気がしてなりませんが・・・


入団式

  応援歌練習の最終日に行われるのが入団式です.水高は生徒全員が応援団員という組織形態ですが,新入生は入団式を経て真の応援団員になれるわけです.入団式では,2・3年生に囲まれた台上で1人ひとり自己紹介等を行います.珍しい中学校から来た生徒は校歌を歌うことになってしまいます.自己紹介の内容は様々で,オーソドックスな例だと入部したい部活,珍しいケースだと応援団リーダーが好きですみたいな事を言った新入生もいました.1クラス全員が叫び終わったら,クラス全員で突発的に指定された応援歌を歌います.これを7組続けるのですが,この間(約3時間),新入生は立ったままです.式終了後,新入生は棒のようになった足を引きずりながら各教室に帰っていき,そこで・・・
  全課程が終了後,赤レンガで校歌を叫んで解散となります.厳しい応援歌練習を経ているにも関わらず,終了後は写真のような状態になります.

開校記念講演


  4月15日が開校記念日です.私が入学する数年前までは,開校記念マラソンというとんでもない行事も行われていたそうですが,近年は講演会のみということになっています.毎年,水高OBの方が講演にいらっしゃいます.例年,講演者の友人などが講演者を紹介するのですが,私が3年生のときはその紹介の話が30分以上かかるという異常事態になり,爆笑(?)を誘っていました.
  講演終了後,講演者の方にエール・第2応援歌を送ったのですが,非常に感激され,新幹線の時間が迫っているにも関わらず,1人ひとりと固い握手をして帰京されたことを覚えています.


壮行会(地区)


  高総体へ向けての壮行会です.ここで出場する各部にエールと第2応援歌が送られます.余談ですが,部の数が多く,和名で呼ばないとうまくエールができないので,前日はかなり練習した記憶があります.一番エールしにくかったのはウエイトリフティング部でしょうか.このときは,バスケ部の主将が選手代表として挨拶を行ったのですが,彼が「野球もいいですが,他のスポーツもがんばっているので観に来てください」と言ったのは,高校スポーツにおける野球偏重主義へのアンチテーゼだったと私は思っています.
  ちなみに,リーダー内でも6人中5人(5人の内1人は山岳部なので地区予選免除)が運動部に所属していたので,翌日からは選手として競技に出場したわけです.


高総体地区予選

  6人いるリーダーの内,テニス1名・サッカー1名・バレー2名が選手として出場ということで,地区予選免除の山岳部のリーダーと部活をやっていなかったリーダーの2人でほとんどの部活の大会会場に応援に行くという強行日程でした.私が所属していたバレー部は,地区通過最後の枠を争った試合でタイミング良く応援をしてもらい,その雰囲気に乗って最後の枠に滑り込んでしまいました.久々に応援される側に回ってみて,改めて応援の効果というか威力を再認識した出来事でした.